シビック・アグリカルチャー トーマス・ライソン 農林統計出版
2022.3.27
アメリカは市場経済を至上とする自由主義の国家で、農業の生産性や効率性に重きを置いています。
一方で、遠く離れた海外や国内の遠隔地から農産物を確保するだけでなく、都市周辺の地域コミュニティにおいて、生産者と消費者とが直接繋がり、地域の発展に生かす農業、「シビック・アグリカルチャー」が積極的に展開されています。
具体的には、都市近郊の農家が直接、販売するファーマーズマーケットや、有機に特化した農業、消費者が予め農産物の購入を予約するCSA(地域支援型農業)など多様な農業のかたちがあります。
このように著者であるトーマス・ライソン氏は、社会のために有効であるのは経済、生産性だけでなく、地域コミュニティの形成や豊かな環境の維持などであり、副題にある「食と農を地域に取り戻す」ことを「プラグマティズム」(今、最も必要であること)としています。
この本は、アメリカにおける「シビック・アグリカルチャー」について、歴史的な経過や理論的バックボーンも含め、とてもわかりやすく著されています。
ディーセント・ファーム かしわらにおいても、これから、ぶどう栽培によって障がい者の方々の働く場をつくることに加え、第2ファームを中心に多くの方々にとって、農作業を通じて生を慈しみ、触れ合えるコミュニティーの場となる「シビック・アグリカルチャー」をめざしたいと思う、とても刺激的な本でした。